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『歴史のなかの貨幣 銅銭がつないだ東アジア』(黒田明伸)
黒田明伸著『歴史のなかの貨幣 銅銭がつないだ東アジア』(岩波新書)は、東アジアを中心とした貨幣史を、グローバルな比較史的視点と基層経済への深い洞察を通じて描き出す意欲的な一冊です。本書は、貨幣の額面価値と素材価値の乖離が経済や社会に与え... -
『運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」』(橘玲・安藤寿康)
『運は遺伝する 行動遺伝学が教える「成功法則」』(橘玲・安藤寿康、NHK出版新書)は、行動遺伝学と脳科学の知見を通じて、知能やパーソナリティが私たちの人生における「運」や「成功」にどのように関わるかを探る一冊です。文筆家の橘玲と行動遺伝学の... -
『九鬼周造』(田中久文)
哲学と文学の境界を軽やかに越える九鬼周造の思想を、田中久文が丁寧に読み解いた『九鬼周造』は、偶然性という不確かなものを通じて人間の生と芸術を見つめる一冊です。 偶然性と詩学の交錯 九鬼周造は、偶然性を哲学の中心に据え、それが人間の倫理や芸... -
静かな退職という働き方(海老原嗣生)
海老原嗣生氏の『静かな退職』(PHP新書)は、現代日本の労働文化に深く根ざした「忙しさ」の本質を問い、効率的で持続可能な働き方を模索する一冊です。本書は、グローバルな文脈で注目される「静かな退職(Quiet Quitting)」を日本特有の職場環境に適用... -
『枠組み外しの旅:「個性化」が変える社会』(竹端寬)
竹端寬の『枠組み外しの旅:『個性化』が変える社会』は、現代社会の硬直した枠組みを解き放ち、個々の主体性を尊重する新たな社会像を模索する一冊である。本書は、哲学、心理学、社会学の知見を織り交ぜながら、復讐と贈与の対比や「和」と「同」の再解... -
『自由意志の向こう側 決定論をめぐる哲学史』(木島泰三)
木島泰三の『自由意志の向こう側 決定論をめぐる哲学史』(講談社選書メチエ、2020年)は、古代から現代に至る決定論と自由意志の議論を、哲学史の広大な地平にわたって丁寧にたどりつつ、現代の認知科学や進化論の知見を織り交ぜた野心的な一冊である。... -
『ウィーブが日本を救う』(ノア・スミス)
ノア・スミスの『ウィーブが日本を救う(WEEB ECONOMY)』は、経済学、文化、歴史を織り交ぜ、日本の経済的停滞を打破する新たな道を模索する意欲的な一冊です。本書は、日本が「半透膜に包まれた国」として外来のアイデアを選別的に取り入れ、独自の文化... -
『7つの安いモノから見る世界の歴史』(ラジ・パテル、ジェイソン・W・ムーア)
『7つの安いモノから見る世界の歴史』(ラジ・パテル、ジェイソン・W・ムーア著、作品社)は、資本主義の500年にわたる進化を、労働、自然、食料、エネルギー、貨幣、ケア、生命という7つの「安価なモノ」を軸に描き出す野心的な一冊である。本書は、単な... -
『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』(阿部幸大)
『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』(阿部幸大著、光文社、2024年)は、アカデミック・ライティングの技術を初学者から中級者まで幅広く導く、独自の視点と実践的なアプローチを兼ね備えた一冊です。本書は、単なる形式的な文章術にと... -
『雨の日の心理学』(東畑開人)
東畑開人著『雨の日の心理学』(角川書店)は、ケアという行為の深層に潜む心理的・社会的な葛藤を、静謐かつ鋭い筆致で描き出す一冊です。ケアとは、誰かを支える温かな行為であると同時に、提供者自身を孤独に追い込み、社会から見過ごされがちな「見え...