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『記号論への招待』:言語が創る虚の世界と文化の秘密

『記号論への招待』(池上嘉彦、岩波新書)の紹介

概要


『記号論への招待』(岩波新書、黄版258、1984年初版)は、言語学者・記号論者の池上嘉彦による入門書です。言語や記号がどのように意味を創り出し、現実とは異なる「虚の世界」を構築するかを、わかりやすく解説します。ことわざ、広告、詩といった身近な例を通じて、記号論の基礎から文化や芸術への応用までを幅広くカバー。一般読者から専門家まで、言語と文化の関係に興味がある人に最適な一冊です。

主な内容


本書は、以下の4つの章で構成されています(目次に基づく概要):

  1. ことば再発見―言語から記号へ―
    言語を記号として捉え直し、記号の基本的な役割(命名や文化の象徴)を紹介。言語が単なる伝達手段ではなく、創造的な意味を生み出す力を持つことを示します。
  2. 伝えるコミュニケーションと読みとるコミュニケーション―伝達をめぐって―
    コミュニケーションの仕組みを、コード(規則)とコンテクストの視点から分析。ナンセンス詩や非標準的な伝達を通じて、解釈の多様性を探ります。
  3. 創る意味と創られる意味―意味作用をめぐって―
    記号の統辞規則(構造)や意味論が、現実から独立した「虚の世界」を創出するプロセスを詳細に解説。特に、幼児の言語習得におけるコンテクスト依存から自立への移行や、言語の「線条性」(時間・空間の連続性)が創造性を支える点が強調されます。
  4. 記号論の拡がり―文化の解読のために―
    記号論を言語を超えて、広告、建築、神話などの文化現象に応用。言語の構造が文化の解読にどのように役立つかを示します。

独自性と魅力


池上は、記号の統辞規則が単なる構造ではなく、複雑な「虚の世界」(例:文学や映画の想像世界)を生み出す力を持つと主張します。特に、幼児が言語を学びながらコンテクストから自立していく過程や、言語の線条性が創造性を支えるという視点は、言語と文化の深い関係を明らかにする独自の洞察です。また、英語(行動中心)と日本語(状態変化中心)の言語タイプの違いを背景に、文化的差異を考察する点も特徴的です。
本書は、専門的な議論を身近な例で説明し、教養として記号論を学びたい読者に親しみやすい内容となっています。

対象読者

  • 言語学や記号論の初心者で、言語が文化や思考にどう影響するかに興味がある人。
  • 文学、芸術、広告などの創作に関わる人。
  • 言語習得やコミュニケーションの仕組みを深く知りたい教育者や研究者。

言語がどのように世界を創り、わたしたちの思考や文化を形作るのかを知りたいなら、『記号論への招待』は魅力的な一歩となるでしょう。

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