本書の構成と特徴
本書は、序章でアカデミック・ライティングの目的と意義を概説し、続く章で論文執筆の基礎、情報収集、パラグラフ構築、引用の扱い、推敲までを体系的に解説します。中心的な第5章「長いパラグラフをつくる」では、情報量の増やし方やパラフレーズの技術を詳細に分析。特に、センテンスを「レベル1(ファクト)」から「レベル5(テーゼ)」に分類し、レベル4の「パラフレーズ」をパラグラフの「蝶番」として位置づける独自のフレームワークは、論理展開を視覚的かつ実践的に理解する手助けとなります。
身近な題材を用いることで、初学者でも抽象的なライティング技術を具体的にイメージしやすくなっています。
独自性と魅力
本書の最大の魅力は、ライティングを単なる技術ではなく、思考のプロセスとして捉える姿勢にあります。たとえば、ファクトに周辺情報を積極的に盛り込むことで文章の重厚さと信頼性を高めるテクニックは、単なる「字数稼ぎ」ではなく、読者の信頼を獲得するための戦略として提示されます。また、パラフレーズを「思考力そのもの」と定義し、具体から抽象への滑らかな接続を重視する点は、ライティングを知的作業として再定義する試みとして新鮮です。
どんな人に薦めるか
本書は、大学でのレポートや論文執筆に初めて取り組む学生、アカデミック・ライティングの基礎を学び直したい社会人、そしてライティングを通じて論理的思考を深めたいすべての人に適しています。特に、日本の文化的文脈に根ざした例を通じて学びたい方や、単なる形式論を超えた「思考するライティング」を求める方に強くお勧めします。教員やライティング指導者にとっても、独自のフレームワークを授業に取り入れるヒントとなるでしょう。
結論
『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』は、従来の教科書とは一線を画す、知的で親しみやすいガイドです。細部の情報量とパラフレーズを重視する姿勢は、文章を「賢く、詳しく」するための実践的な指針を提供し、書くことへの自信を育みます。学術的な文章に苦手意識を持つ人も、本書を通じて「書く楽しみ」を見つけられるはずです。
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